私の好きな音楽 『白鳥の湖』

 聞いていて映像が浮かぶ音楽が好きです。今はちょうど秋ですが、鈴虫たちの鳴いている声を聞くと秋の紅葉やお祭りや栗を使ったお菓子、新米のおいしい香り一杯のおにぎりが頭の中に浮かんできます。まるで映画を見ているようです。音楽で言えば、チャイコフスキー白鳥の湖」をあげます。全編を通してチャイコフスキーの詩情豊かな旋律が様々なイマジネーションを生み出します。これはメディアの世界にも影響を与えます。この曲を聴いて思い出す映画では「リトル・ダンサー」のラストシーンで少年の憧れが結実し高揚した瞬間を、「ブラックスワン」ではサスペンスタッチを盛り上げる大きな要素にと、形を変え楽しませてくれました。様々なビジュアルに柔軟に対応し、ドラマや映像を盛り立てます。時に主人公以上に表に立ち、時には静かに後ろからそっと見守るそんな音楽です。また、ロシアの人は日本人以上に繊細でロマンチストなんだと気付かされます。物を書いて楽しんでいる私にとっても、この音楽は一冊の本を読むような気構えで聴いています。長い歴史を経て残り続ける音のきらびやかな粒を拾い集めながら、その創造性や普遍のストーリーを抱くとき、人間は最も豊かになれるような気がします。豊かさとは刺激や感情に起伏で現れるのではなく、脳の片隅がひっそりと生み出す小さな映画館のシートに座ったときに現れるのではないでしょうか。G+のみすず日記に上がっています。
※バレエもぜひ見てください。