大須観音さん

名古屋には観音さんが数多くいらっしゃいます。さすがお寺の数が日本一の愛知県です。私がよく行く観音さんは「大須観音」です。北野山真福寺宝生院。街のど真ん中あります。目の病気になった頃から、お参りに行ってましたが、ここ3年ほどで、頻繁に通うようになって来ました。2年ほど前、視力が急激に落ちてきて、お医者さんからも、休養してくださいと指示が出たので、やむなく清掃の仕事を辞めてしまいました。「観音さんに行ってみよう」目の症状が悪化し、また休養から時間に余裕も出てきて、大きな総合病院へ通い始めて、しばらく経った頃です。目が見えにくいので、ヨチヨチと壁伝いにふらふら歩きながら観音さんに会いに行きます。もう途中で何度も「観音さん、もう無理だからここでお参りしていいかな」と交差点のたびに手を合わせました。疲れきっています。信号が見えなくて、周りの人の動きを見て、交差点をわたります。車や自転車がとても怖くて、凶器のように見えます。それでも、足が動こうとします。「ちゃんと見ているから、そばに来なさい」と言うことかもしれません。なんとか、到着しました。母の形見の数珠を取り出し、大門をくぐります。お線香のにおいが遠くからしています。すぐ脇のお地蔵さんに挨拶して、観音さんに会いに行きます。石段は白くて、段差が確認できません。一歩づつよいしょ、よいしょといって、気合を入れて登って行きます。その頃になると、涙が止まりません。「よくがんばったね。よく来てくれたね」と言われているようで、涙が止まりません。観音さんの姿は見えません。微かに見えるろうそくの炎が観音さんだと信じて唱えます。「なむあみだぶつ」そして「おん あろりきや そわか」、、、涙はますます激しく流れます。涙は眼球の中の眼圧を上げるため出さないようにがんばってきました。苦しいことがあっても、辛いことがあっても、ニコニコすることで涙を止めてきました。でも、止まりません。参拝後、石段をよいしょよいしょと降りていきます。とうとう、立っていられなくなり、本堂の脇で声を上げて泣いてしまいます。あんなことは初めてでした。その間中「よく来たね。よくがんばったね」の声が響いてきて、涙がボロボロこぼれます。ようやく落ち着くと立ち上がり、守り本尊の普賢さんに挨拶します。「なむあみだぶつ」そして「おん さんまや さとばん」見上げても。お顔が見えないのに、目を細めたり、力を入れたりしますが、見えませんでした。頭の中ではまた「よく来たね。がんばってきてくれたね」と聞こえます。私は何度もうなづいていました。 
家に帰ると、ぐったりします。いつも、お寺や神社に行くと疲れて帰ってきて、寝てしまいますが、その日は精も魂も尽きた感じです。布団に入って、かなりの時間、寝てしまいました。しかし、起きてみるとすっきりしていました。心の中は青空のようです。お日様はすぐ見つかりました。ちゃんと私を照らしてくれています。